『アメリカン・ヒストリーX』差別という大罪は、過去を浄化できない【2020年にも通じる深刻な社会問題】

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アメリカには「人種差別」という深刻な問題が昔からあり、それを扱った作品は1992年の「ハーケンクロイツ/ネオナチの刻印」など、多く公開されてきた。

しかし、1998年に公開された「アメリカン・ヒストリーX」ほど、人種差別という重いテーマを深刻に、バイオレンスに描いた作品はないだろう。

本作は「バードマン」のエドワード「ターミネーター2」のエドワード、2人のダブル・エドワードが兄弟役で出演している傑作だ。

そのバイオレンスな内容から本作は、問題作として知られ、制作の時点でも数多くの問題に直面した。

「アメリカン・ヒストリーX」は人に勧めるべき映画ではないが、人種差別の問題が再びニュースで深刻に取り上げられている今だからこそ、心に刺さる普及の名作なのだ。

「X」が意味するアメリカの残酷な歴史

アメリカン・ヒストリーX

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本作のタイトルである「アメリカン・ヒストリーX」は、物語と同様に人種差別に基いて付けられている。

この「X」は、アメリカに奴隷として連れてこられ、異国の地で名前を奪われた者の仮名(刻印)として使われていたという。

そして「アメリカン・ヒストリー」を直訳すると、「アメリカの歴史」という意味。

つまり、本作のタイトルは【<X>と名付けられた奴隷のアメリカ史】という意味合いになるのだ。

白人至上主義者(ネオナチ)のデレクは、黒人の車泥棒を残虐に殺害したことで刑務所に服役し、3年の刑を全うし帰宅した。

兄の背中を見て育った弟ダニーもネオナチであり、尊敬する兄の帰宅に喜びを隠せずにいた。

しかし、3年ぶりに会うデレクは今までの彼とは違い、穏やかでネオナチを極めた人物と程遠い存在になっていた。というのがプロット(あらすじ)。

本作で描く「X」は奴隷ではなく、1から人生をやり直そうとし、過去の汚名を捨てたデレク自身なのだ。

ジョーカーすらも出演拒否した問題作

アメリカン・ヒストリーX

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監督のトニー・ケイは、本作からブレイクしたと言っても過言ではなく、アメリカにいまだ蔓延る差別問題を視聴者に知らしめた。

トニー・ケイはもともと、主人公のデレク役に2019年の「ジョーカー」でオスカー俳優に選ばれた、ホアキン・フェニックスに出演してもらう予定だった。

しかし、ホアキンは本作で描かれる過激なネオナチ物語に嫌悪感を抱き、出演を辞退。

「ゴッドファーザー」で知られる今は亡き俳優マーロン・ブランドは、デレクを右腕として使うネオナチのボス、キャメロン役をオファーされたが、ホアキンと同様の理由で辞退した。

パンク・ロック・グループの「Anti-Heroes」は、バンドとナチスが関連しているようなタトゥーを本作で使われ、配給のニュー・ライン・シネマを訴える騒動まで起こしている。

本作は評論家から絶賛される一方、一部の視聴者や映画スターまでもが目を背けてしまう問題作なのだ。

内に秘めた狂気を開放したエドワード・ノートン

アメリカン・ヒストリーX

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「アメリカン・ヒストリーX」で視聴者に度肝を抜く強烈なインパクトを叩きつけたのが、スキンヘッドと胸にハーケンクロイツのタトゥーを入れた、俳優のエドワード・ノートンだ。

ノートン演じるデレクは父親が黒人に殺害されたことで、ネオナチの一員になった過激な白人至上主義者。

モノクロ(白黒)映像で描かれるデレクの過去は、本当にノートンが差別主義者だと思えてしまうような演技だった。

彼は撮影前の役作りでスキンヘッドにし、13キロの増量で今までとは一味違う、狂気じみた姿を披露。

本作を視聴した俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーは、ノートンに直接電話をかけ「ステロイドを打ったのか?」と質問したほど。

凄まじい役作りと演技を披露した彼は、アカデミー賞の主演男優賞にノミネートされ、オスカー候補に輝く。

個人的にはホアキン・フェニックス版のデレクも見てみたいが、もし彼が本作の出演にOKしていたら、私たちはノートンの狂気を見られなかった。

細かなディテールにこだわったデイビット・マッケナの脚本センス

アメリカン・ヒストリーX

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「アメリカン・ヒストリーX」は過激な物語のみに頼らず、実話や細かなディテールにまでこだわっている。

脚本を担当したデイビット・マッケナは、実際にネオナチと会い、彼らが語ったことを本作に散りばめた。

例えばパーティーのシーンで、イーサン・サプリー演じるセスのジャケットにあるハーケンクロイツ(鍵十字)は、逆に描かれている。

これは実際のネオナチの世界で、自身がリーダーとして先行することを意味する。

セスが「88」と書かれたシャツを着ていたのも意味があり、アルファベット順に数えて8番目にくる「HH」という意味。この「HH」はナチス式敬礼「ハイル・ヒトラー(Heil Hitler)」を意味するのだ。

また、「アメリカン・ヒストリーX」の登場人物も、実在の人物に基いている。

主人公デレク・ヴィンヤードは、元ネオナチのフランク・ミーンクという人物をベースに描かれた。

キャメロン・アレクサンダーの性格は、南カリフォルニアに拠点を置く過激派ネオナチ・グループ「ホワイト・アーリア・レジスタンス(WAR)」のリーダー、トム・メッツガーに基いている。

差別という罪は、過去を浄化できない

アメリカン・ヒストリーX

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本作は過去と現在がモノクロとカラーで描かれており、重いテーマを扱っているのにもかかわらず、デレクの精神的な成長がわかりやすくなっている。

怒りはお前を幸せにしたか?家族を幸せにしたか?

彼はこの言葉や、差別していた黒人男性との友情を通し、「憎しみは悲劇しか生まない」と気づく。

しかし、本作そういった更生や過ち、後悔のみを描いているのではない。

「アメリカン・ヒストリーX」最大のテーマは、<浄化できない差別という大罪(過去)>であり、デレクは更生してもなお過去に犯した罪の代償を、別の形で払う必要があった。

私たちは敵ではなく友人だ。敵であるはずがない。激情におぼれて愛情の絆を断ち切るな。仲良き時代の記憶をたぐりよせれば、よき友になれる日は再び巡ってくる。

第16代 アメリカ合衆国大統領 エイブラハム・リンカーン

現代にも<差別>という問題が蔓延っているからこそ、私たちは「アメリカン・ヒストリーX」を見る必要があり、リンカーン大統領の言葉を深く考える必要があるのだ。

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本ページの情報は2020年9月時点のものです。
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