『ラスベガスをやっつけろ』黄金時代を描くバッドトリップ作のマスターピース

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フラワームーブメントが終焉した70年代を舞台に、<治療薬>と称した大量のドラッグでバッドトリップになりながら、一流ホテルを荒らしまくるサイケデリック型ブラック・コメディ

それがゴンゾー(ならず者)としてジャーナリズム史に名を刻んだ、ハンター・S・トンプソンの同名小説を映画化した「ラスベガスをやっつけろ」だ。

現在では名俳優のジョニー・デップベニチオ・デル・トロが主演を務め、俳優トビー・マグワイアや女優キャメロン・ディアスも出演。

常人には理解しがたい作品だが、「ラスベガスをやっつけろ」が現在でも<マスターピース>として扱われているのには、映画同様のイカレタ制作秘話が関係している。

ジョニー・デップの徹底した役作り

ラスベガスをやっつけろ

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ジャーナリストのラウル・デュークと弁護士のドクター・ゴンゾーは、薬物によるバットトリップに襲われながらも車を運転し、取材のためラスベガスへ向かっていた。

ドラッグ三昧のジャンキー2人は、一流ホテルのスウィートルームに宿泊し、部屋を荒らしたり、バーでバッドトリップに陥ったりしながら、様々な騒動を起こす。

プロットのみを聞いたら少し興味がわく内容だが、本作にストーリー性を期待してはいけない。

なぜなら、本作はハンター・S・トンプソンの脳内バッドトリップを追体験する作品だからだ。

他にも本作の最大の魅力と言っていいのが、俳優ジョニー・デップの徹底した役作りである。

彼は原作者トンプソンのように頭を剃り、彼が70年代に着ていた実際の服(シャツと帽子)を身に着けながら、彼のしぐさや口癖、喋り方を真似するために4か月もトンプソンと共に過ごした。

デップは自身をトンプソンだと思い込むために、彼に鉱山労働者用のヘルメットを被せ、4ヵ月も鏡を見ることを拒否していたという。

役作りはこれだけでは終わらず、撮影前にデップは自身が所有する車と、トンプソンが所有する車を交換し、ハイジという謎の女性とカリフォルニア周辺をドライブ。

デップはライターではないが、トンプソンになりきるために、ハイジとのドライブなどをつづった、エッセイまで執筆している。

彼の徹底した役作りを見たトンプソンはデップと熱い友情を築き、彼以外の俳優がラウル役を演じていたら、どんな大物でも椅子で殴っていたと語る(もともとは俳優のジャック・ニコルソンが出演オファーを受けていた)。

<トラッシュ>のように扱われた出演陣

ラスベガスをやっつけろ

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やはり「ラスベガスをやっつけろ」が<マスターピース>と言われるのは、雑に扱われたキャストも関係してくる。

ラウルの相棒で弁護士のゴンゾー役で出演した俳優のベニチオ・デル・トロは、毎日ドーナツを多く食べるよう言われ、増量に成功した。

当時は爽やかな若手俳優として知名度を上げていたトビー・マグワイアも、もともとは髪の毛を全て剃らされる予定だった。

しかし、予算の関係でそれはできず、代わりにマグワイアを坊主のように特殊メイクし、彼に金髪ロン毛のカツラを被らせるという、謎のことまでしている。

他にも女優のキャメロン・ディアスが、レポーターとしてエレベーターに登場するシーンも見ものだ。

予算がないのにも関わらず、誰が当時のエリート・モデル&若手女優を、1分程度のシーンに登場させるのだろうか?

誰が名作「アダムス・ファミリー」で知名度を上げた、女優のクリスティーナ・リッチを、ハイにさせられた少女ルーシー役で出演させるのだろうか?

そう。それが監督のテリー・ギリアムであり、それが映画「ラスベガスをやっつけろ」だ。

私はここまでキャストを雑に扱った作品を見たことがない。だからこそ、この作品に惚れたのかもしれない。

映画同様、まさにイカレタ撮影

ラスベガスをやっつけろ

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本作はまさに<イカレタ>作品だが、撮影現場も映画の内容に負けずイカレテル

「ラスベガスをやっつけろ」の予告編では、ドクター・ゴンゾーが銃を上空に向けて発砲するシーンがある。

通常の映画だったら別で録音した音声を使うが、本作ではゴンゾー役のベニチオ・デル・トロに、本物の銃を発砲させ撮影した。

その他のシーンで同じ型の銃が登場するが、これは小道具ではなく、「S&W M19」という本物のコンバットマグナムだ。

不思議でイカレタ制作秘話はまだまだある。冒頭でヒッチハイカーを拾うため車を停車させるシーンがあり、その後ろに奇妙なサボテンがある。

なぜかこのサボテンは莫大な予算をかけて、ラルフ・ステッドマンというイラストレーターに設計させ、テリー・ギリアム監督は同じものを本作のいたるところに登場させた。

先ほどは<キャストは雑に扱われた>と言ったが、雑に扱われたのはキャストだけではなく製作陣もだ。

スピード違反でラウルの車を止めた警官役のゲイリー・ビジーは、彼に「キスしてくれ」とせまる。

この名シーンはもともと脚本になく、ゲイリー・ビジーの即興演技であり、ギリアム監督や原作のトンプソンは最初、この即興演技に否定的な意見だった。

しかし、ビジーは彼らに「このシーンを何度も見てくれ」と言い、数十回ほど見たギリアムとトンプソンは、何を思ったのかこのシーンを本作に採用した。

映画の冒頭でドクター・ゴンゾーが、スーツケースにこぼれたドラッグを舐めるシーンも即興演技であり、ギリアム監督に無理やり採用させたという。

また、ラウルはギャンブルのときに財布を開くと、そこには2枚の身分証明書がある。

1枚目は映画のために作られた架空のIDで、2枚目は原作者ハンター・S・トンプソンの本物の運転免許証だ。

絶妙なカメラワークで表現したバッドトリップ

ラスベガスをやっつけろ トビー・マグワイア

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本作ではドラッグ文化の生ける屍(ゾンビ)のようなジャンキーの姿を、絶妙なカメラワークで映し出している。

このカメラワークも「ラスベガスをやっつけろ」の魅力の1つであり、顔面ドアップで映されるラウル役のジョニー・デップは見ものだ。

やはりその中でも、映画の終盤でトビー・マグワイア演じるヒッチハイカーを下から映し出したシーンは傑作だと言える。

通常の映画では、立場の高い人物(マフィアのボスなど)を下から映し、立場の弱い人物を上から映す。

しかし、少し不気味なヒッチハイカーを下から映すことで、ラウルがどこかに感じた彼の<狂気>を表現することに成功した。

これは本作で撮影を担当した、ニコラ・ペコリーニの<センス>と言っても過言ではない。

「ラスベガスをやっつけろ」にはこういった描写が多くあるため、何度見ても面白い作品だ。

トンプソンの<脳内バッドトリップ作>はなぜ反響を呼んだのか?

ラスベガスをやっつけろ

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本作の監督であるテリー・ギリアムは、インタビューで次のように語っている。

「私は本作が世代関係なく好かれる、最高の作品にしたかった。同時に世代関係なく、最も嫌われる作品にもしたかったんだ。

監督が語ったように、トンプソンの脳内バッドトリップ作「ラスベガスをやっつけろ」が反響を呼んだのは、嫌われる作品だからだ。

本作のキャスト陣は類を見ないほど雑に扱われ、ストーリーも荒々しく、常人では全く理解できない。

しかし、これほどドラッグカルチャーの本質を突いた作品は、非常に少ないのが事実。

こういった<常人では理解できない脳内>こそが、映画「ラスベガスをやっつけろ」の全てだ。

残念ながら原作者のハンター・S・トンプソンは2005年にこの世を去ったが、これからも彼の書籍が映像化されることに期待したい。

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本ページの情報は2020年9月時点のものです。
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ラスベガスをやっつけろ
監督 テリー・ギリアム
脚本 テリー・ギリアム
アレックス・コックス
トニー・グリゾーニ
トッド・デイヴィス
原作 ハンター・S・トンプソン
出演者 ジョニー・デップ
ベニチオ・デル・トロ
トビー・マグワイア
など

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