映画『グリーンルーム』実話を基にしたパンクロック・ホラーの傑作

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―入ったら最後、出口はない (ONE WAY IN. NO WAY OUT.)―

殺人事件を目撃したことにより、ネオナチの集団に命を狙われた若者たちが、楽屋に立てこもり反撃する様子を描くスリラー&パンクロック・ホラー映画「グリーンルーム」

10代の頃にパンクロック・バンドに所属していたジェレミー・ソルニエが、脚本に実体験やさまざまな名作のオマージュを詰め込んだ傑作として知られる。

本作には多くのゴアシーンも含まれており、ファンゴリア・チェーンソー賞では最優秀メイクアップ&SFX賞に輝き、同映画祭ではベスト・フィルム賞にもノミネートした。

名俳優アントン・イェルチン、最初で最後のパンク

グリーンルーム

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2016年6月19日、不治の病と闘っていた俳優のアントン・イェルチンが、27歳という若さで突然この世を去った。

彼は「スター・トレック」シリーズなどの名作に出演し、私生活では自身のバンドでギターとピアノを演奏。

そんな音楽好きのアントン・イェルチンが、最初で最後のパンクロックを披露したのが映画「グリーンルーム」である。

無名のパンクロックバンド「エイント・ライツ」が、極貧ライブツアーで訪れたクラブで殺人事件を目撃し、白人至上主義者(ネオナチ)に命を狙われることになった。

楽屋(グリーンルーム)に立てこもったバンドのメンバーと、客として来て友人を殺害されたアンバーは、ネオナチたちに反撃を試みる。

アントン・イェルチンは本作で主人公のパット役を演じ、物語の途中で腕に大怪我を負うも、ペイントボール作戦でネオナチと戦う青年を演じた。

本作の序盤ではデッド・ケネディーズの反ナチズムの曲「Nazi Punks F**k Off」を歌うシーンがあるが、これは実際にイェルチンが歌っている。

ベースなどの演奏も本作のキャストによるもので、リース役で出演したジョー・コールは、他のキャストと違い自身だけ音楽経験がなかったため、数分のシーンのためにドラムを習った。

彼らの最初で最後のパンクロックは、脳裏に永遠に刻まれるだろう。

監督の実体験を(少しだけ)ベースにした物語

グリーンルーム

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「グリーンルーム」の監督であるジェレミー・ソルニエは、10代の頃にハードコア・パンクロック・バンドに所属しており、そのときの実体験が本作のベースになっている。

パンクバンド「エイント・ライツ」に所属する、パットやタイガー、サムやリースは監督が所属していたバンドメンバーの性格と瓜二つだという。

監督とバンドメンバーは、15~17歳までアメリカのワシントンD.C.で極貧ツアーを行い、その際に訪れた場所の1つがネオナチ行きつけのライブハウスだった。

監督らが楽屋にいると、ライブハウスの外で殺傷事件が起きイベントは中止。監督やバンドメンバーはネオナチによって楽屋に1時間ほど監禁された。

監禁状態から解放され外に出ると、そこには大量の血があり、ジェレミー・ソルニエ監督のトラウマトになったという。

それから約25年後、10代の少年少女らが経験したこの話は、「グリーンルーム」という名で映画化された。

また、劇中でパットが語った元海兵隊とのペイントボールの話も、監督の実体験である。
 

ジェレミー・ソルニエの脚本遊び

グリーンルーム

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60年代~80年代の映画ファンなら、ジェレミー・ソルニエの脚本遊びとも言えるような、名作のオマージュが多くされていることに気づくだろう。

ソルニエ監督は本作に「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968年)」のような懐かしいパニック性を込め、「脱出(1972年)」のような脱出劇も描いた。

他にも「ジョン・カーペンターの要塞警察(1976年)」のような警察がこない恐怖、「反逆のパンクロック」で描かれた嘘みたいなドキュメンタリー性も追及。

ソルニエ監督はこの他にも、「わらの犬」「地獄の黙示録」「マッドマックス2」「リバース・エッジ」「ダイ・ハード」などのちょっとしたオマージュも込めている。

映画の序盤で頭にナイフが刺さったアンバーの友人は、監督が刑務所のドキュメンタリー番組で同じ光景を見たのがきっかけで、本作にも描いたという。

実は「グリーンルーム」で描かれるネオナチの赤い靴紐にも意味があり、これは実際のネオナチ集団のあいだで伝統化されていることで、他人種の血を流した者にこの赤い靴紐が贈られる。

そのため、実際のネオナチは赤い靴紐を得るために、白人ではない人種をランダムに襲撃するという事件が過去によく発生した。

「グリーンルーム」の印象的なポスターは、監督が好きだったパンクロック・バンド、ザ・クラッシュのアルバム「ロンドン・コーリング」のオマージュである。

『グリーンルーム』に隠された制作意図

グリーンルーム

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野蛮なパンクロック・ホラーの傑作として謳われる「グリーンルーム」で、監督が意図したことは視聴者に「WHAT IF」を考えてもらうことだ。

この「WHAT IF」は、「もしこの出来事が起こったらどうする?」という意味であり、何かが将来に起こり得る可能性を示唆する時に使う表現。

ソルニエ監督は10代の頃にネオナチが集うライブハウスで殺傷事件を目撃し、警察が来るのかもわからず1時間ほど楽屋に監禁され、その後は無事解放された。

しかし、もし監禁から解放されず、凶悪なネオナチ集団に襲われていたら?

この「WHAT IF」で監督が導き出した回答が、映画「グリーンルーム」の物語なのだ。

<もしアナタがこの状況に陥ったらどうする?>

本作はこれを考えながら観ると、かなり楽しめるはずだ。

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