『ミッドサマー』考察と解説:ストーリーに隠された17個の真実

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アリ・アスター監督の映画「ミッドサマー」は、家族の死後に大学生のダニーがスウェーデンで開かれる真夏の祭典に参加し、数々の奇妙な出来事が起こるフォークホラー映画。

通常のホラー映画と違う「恐怖」を見られることから、本作は数々の映画祭で賞を受賞した。

本作は複雑にストーリーが進んでいくが、監督のアリ・アスターは作品の中に、いくつかヒントを忍ばせている。

※本記事にはネタバレも含まれています。

冒頭の絵

冒頭の絵

Image by:screenrant.com

「ミッドサマー」は、冬と夏の変化を示す気味悪い絵から始まる。

映画を2度見たなら気づく人も多いが、オープニングに登場する絵は、物語の全てを語っている。

  • 絵の左はダニーの家族の死
  • 右はダニーをなぐさめるクリスチャン
  • 真ん中はスウェーデンに行く登場人物
  • 最後は不気味な祭典

また、主人公のダニーたちをスウェーデンの祭典に招待した、留学生のペレは「笛吹き男」として絵に描かれており、これは童話「ハーメルンの笛吹き男」に基いている。

この「ハーメルンの笛吹き男」とは、ドイツに現れた笛吹き男が130人もの少年少女と洞窟へ行き、二度と戻ってこなかった話だ。

ダニーの部屋に飾られた「クマと王冠を被った少女」の絵

ダニーの部屋に飾られた「クマと王冠を被った少女」の絵

Image by:medium.com

家族の死後から数か月後、ダニーがベッドに横たわるシーンがあるのだが、彼女の部屋には「クマと王冠を被った少女」の絵がある。

これは1918年に亡くなったスウェーデンの画家、ヨン・バウエルの作品であり、映画を見たなら気づく人も多いだろう。

ここでは映画の終盤で描かれる、花の王冠を被ったダニーと、クマの皮を着せられたクリスチャンを表している。

1939年の映画「オズの魔法使」と「ミッドサマー」

1939年の映画「オズの魔法使」と「ミッドサマー」

Image by:cinemablend.com

アリ・アスター監督いわく「ミッドサマー」は、1939年の映画「オズの魔法使」をオマージュして脚本が書かれている。

主人公も「オズの魔法使」からアイデアを得ており、「ミッドサマー」と共通する点がいくつかある。

  • 不思議な世界に迷い込み、家へ帰ろうとするドロシー
    ・異国の地(スウェーデン)に迷い込み、家へ帰ろうとするダニー
  • 強そうな風格をしているが、実は臆病なライオンのジーク
    ・ダニーと別れたいが、どう切り出したらいいかわからないクリスチャン
  • 心を持たないブリキ男のヒッコリー
    ・村の規則を破り、禁断の本の写真を撮るジョシュ
  • 知恵がないカカシ男のハンク
    ・神聖な木に放尿するなど、ありえない行為をするマーク(最後はカカシ男にされた)

また、ダニーは道中で黄色い花が咲いている道を歩くのだが、こちらは「オズの魔法使」に登場した黄色いレンガの道を表している。

他にもマークの家に「オズの魔法使」に登場したドロシーが飼っていた犬のぬいぐるみがあったり、冷蔵庫の上にカカシ男ハンクのぬいぐるみがあったりする。

激しいカメラワーク

激しいカメラワーク

Image by:thecinemaarchives.com

映画の一部のシーンでは、カメラワークが上下左右に激しく動き、視聴者に吐き気を感じさせている。

監督はこのカメラワークにもヒントを入れており、ダニーがこれから経験する狂った出来事を表現していると語った。

そのため、序盤のカメラワークは少し激しいが、ダニーらが「狂った経験」を重ねていくうちに、カメラワークは落ち着いていく。

また、このカメラワークは2018年の映画「ヘレディタリー/継承」でも採用されている。

薬物による幻覚

薬物による幻覚

Image by:reddit.com

「ミッドサマー」には数々の得体が知れない薬物が登場する。

序盤の方で主人公のダニーたちは薬物を摂取し、植物や花が息をしているような幻覚を見た。

この薬物は「生贄への終わらない快楽」として使用されたが、ダニーだけは「快楽ではなく悪夢を見た」と監督が語っている。

それを証明するように、儀式で2人の老人が自害をしたさい、ダニーには一瞬だけ亡くなった家族が見えた。

また、物語の終盤で彼女の背後にある森には、亡くなったはずの妹の顔が浮き出ていた。

ダニ恐怖症

ダニ恐怖症

Image by:syfy.com

映画の中でダニー達とスウェーデンに来た大学生のマークは、劇中でマダニに悩まされていることを明かした。

他の登場人物はマークの妄想だとして彼をからかうが、これはアリ・アスター監督が悩んでいる「ダニ恐怖症」に基づいて描かれた。

インタビューで監督は、作品で自身が恐れていることを書くのが好きだと語っている。

古代の儀式「ブラッド・イーグル」

古代の儀式「ブラッド・イーグル」

Image by:bustle.com

映画でイギリスから恋人と旅行にきたサイモンは、「蝶や鳥」を連想させるような恐ろしい死に方をする。

彼が死体で見つかるシーン自体も視聴者からすると恐ろしいが、監督はここにも映画に関連するヒントを忍ばせていた。

実は「ブラッド・イーグル」と呼ばれる、古代に行われた方法でサイモンは殺害されており、これは実際に古代の北欧(スウェーデンなど)で行われていた残酷な儀式だ。

また、ここでもっと恐ろしいことは、クリスチャンがサイモンを見つけた時、彼がまだ息をしていたことだろう。

この「ブラッド・イーグル」は、ダニーたちが寝泊まりをした小屋の壁にも描かれている。

ゲーム「スキン・ザ・フール」の意味

ゲーム「スキン・ザ・フール」の意味

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本作ではあまりにも奇妙なことが多く起こるため、中にはマークに何が起こったのかを見逃す人もいるはず。

カルト教の隠された本の写真を撮るため、ジョシュは小屋に忍び込むが、そこにマークの皮を被った何者かが現れる。

映画の前半でマークは村人が遊んでいるゲームの名前を聞き、彼らはそれを「スキン・ザ・フール」だと答えた。

この「スキン・ザ・フール」を翻訳すると「愚か者の皮剥ぎ」という意味で、マークは神聖な木に放尿したあと、ゲームの名前の通り皮を剥がれた。

後悔と反省の鏡

後悔と反省の鏡

Image by:medium.com

この映画では「鏡」すらも重要な役割を果たす。

視聴者はまず、鏡に映った死体から、ダニーの両親が亡くなっていることに気づく。

ダニーが小屋にいるシーンでは、鏡を通して誰かの影を目撃するなどの怪奇現象が起こった。

しかし、監督いわく鏡に映るのは幽霊ではなく、ダニーの後悔と反省、恐れが現れていると語っている。

また、監督の話では鏡に現れた影は、「妹を助けられなかったダニーの後悔」だと明かした。

フラワークラウン(花かんむり)

フラワークラウン(花かんむり)

Image by:reddit.com

「ミッドサマー」で印象的なのは、映画のポスターにもあるようなフラワークラウン(花かんむり)だ。

2度目の視聴なら気づく人も多いかもしれないが、実はダニーの両親が死体で見つかったとき、近くにフラワークラウン(花かんむり)が置いてあった。

監督の話では、「これはダニーの両親の死などは偶然ではなかったことを示す」と語っている。

クリスチャンの飲み物

クリスチャンの飲み物

Image by:reddit.com

食事のシーンでは、クリスチャンの飲み物だけ色が違うことに気づいた人も多いはず。

彼の飲み物だけは薄い赤色をしており、これは血が入っていたことを意味する。

他にも彼の食べ物には毛が入っていたなど、ここではカルト教の伝統的な儀式の生贄に、クリスチャンが選ばれたことを意味している。

字幕がない理由

字幕がない理由

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本作はスウェーデンを舞台にしているが、映画のセリフはほとんどが英語だ。

一部の登場人物はスウェーデン語を話すが、なぜか字幕は登場しない。

字幕が登場しない理由に、監督は「視聴者や登場人物に孤独と感じさせるため」と語っている。

「8」と「9」

「8」と「9」

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映画にはなぜか「8」と「9」の数字が頻繁に登場するが、実はここにも仕掛けがされていた。

「8」を横に倒すと「∞(無限)」となり、これはダニーがこれから経験する無限の地獄を意味する。

9は「90年に1回の儀式」「9日間にも続く儀式」「9人の生贄」を意味しており、「8」と「9」をかけると、村人の人数である「72」となる。

映画に登場したルーン文字の意味

映画に登場したルーン文字の意味

Image by:pajiba.com

ルーン文字とは古代ゲルマン人が使用していた文字であり、「ミッドサマー」にもいくつか登場した。

  • 」登場シーン:メインポール
    意味:家畜や富
  • 」登場シーン:メインポール、一回目の食事のシーン、石碑、ダニーの服
    意味:精神の旅
  • 」登場シーン:ダニー達が寝泊まりをする宿舎
    意味:ミステリーや隠された真実
  • 」登場シーン:二回目の食事、宿舎、ダニーの服
    意味:土地や財産、所有物

など、映画には数多くのルーン文字が登場し、そのどれもが映画に関係する意味となっている。

「頭」に関連したトラウマ

「頭」に関連したトラウマ

Image by:esquire.com

アリ・アスター監督の作品には、「頭」に関するネガティブな表現が多い。

監督の前作である「ヘレディタリー/継承」では、車の窓から顔を出したチャーリーが、電柱にあたってしまうショッキングなシーンがある。

「ミッドサマー」では儀式のために自害するシーンで、頭が割れる瞬間などの恐ろしいシーンが、クローズアップで映し出された。

これはアリ・アスター監督が子供の頃にみたトラウマであり、彼はそれを劇中に描いていると語った。

また、監督はインタビューで「このトラウマは私の次回作でも登場させる予定だ」とも語っている。

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予告編に隠された真実

アリ・アスター監督は予告編にも少し仕掛けをしている。

映画の終盤で、クマの中に入ったクリスチャンなどが焼かれる悪名高いシーンがある。

このシーンは映画の予告編でも見られることができるが、映画では普通の村人が火を放つのに、予告編では防護服を着た人物が火を放っている(動画の2分14秒目)。

映画の序盤でも防護服を着た人物が現れており、ここまでの経緯が偶然ではなかったことを表している。

本作にある2つのテーマ

本作にある2つのテーマ

Image by:irishtimes.com

「ミッドサマー」の脚本と制作をしたアリ・アスター監督は、本作のテーマは「破局」「立ち直り」だと語っている。

  • 立ち直り:映画で徐々に家族の死を受け入れるダニー
  • 破局:ダニーとの別れをなかなか切り出せないクリスチャン

本作はホラー調のため、かなり気味悪く描かれている。

だが、監督が後に行ったインタビューでは、本作は従来のホラー映画ではなく、ロマンス映画でもあることを明かした。

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