ネタバレ感想『スイス・アーミー・マン』生きる喜びを分かち合う孤独な魂と死体

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こんにちは、映画ライターのチョロマツ @dailyaly0819)です。

映画業界で「ダニエルズ」の愛称で知られる、2人組のユニットが製作した怪作「スイス・アーミー・マン」

無人島に流れ着いた自殺願望者が、オナラをする死体に乗り海を越え、生きる喜びを分かち合う様子をコミカルに描く。

本作が公開された当時、サンダンス映画祭ではその奇抜な設定についていけず、途中退席する観客もいたほど。

しかし、映画を最後まで見るとなぜか涙が溢れ、「生きる喜び」を教えてくれる。

それが、自殺願望者の青年と死体がオナラの力で海を越え、「人生とは何か?」を違う形で振り返っていく映画「スイス・アーミー・マン」だ。

謎のヒューマンドラマ「スイス・アーミー・マン」

【あらすじ】生きる喜びを分かち合う人間と死体

スイス・アーミー・マン

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無人島で絶望の淵に立たされ首を吊ろうとしていた青年・ハンクは、浜辺に漂流した謎の死体を見つける。

その死体は「オナラ」をしており、彼はその力を利用し、水上バイクのように海を駆け抜けていった。

彼は無人島から脱出したものの、再び違う無人島にたどり着く。

洞窟で一夜を過ごした後、死体が飲料水の供給源になることに気づくが、その死体は突然英語を話し始めた。

その死体は自らを「メニー」と名乗るが、生前のことは何も覚えていなかった。

ハンクは映画館へ行く喜びなどをメニーに教え、彼が一方的に恋心を抱くサラという女性についても共有した。

サラについて知ったメニーも彼女に恋心を抱き、2人は愛するサラがいる故郷へ戻るため、無人島を脱出しようと試みる。

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【キャスト】米と英の大物俳優による、奇妙なコンビ

スイス・アーミー・マン

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本作の主人公であるハンク役を演じるのは、映画「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」でボストン映画批評家協会賞の主演男優賞に輝いた、俳優のポール・ダノ

そして、死体のメニー役を演じるのは、名作「ハリー・ポッター」でおなじみのイギリス人俳優、ダニエル・ラドクリフだ。

この2人の掛け合わせは多くの評論家から絶賛されており、「ポールとダニエル以外、本作に出演できる俳優はいない」と言われるほど。

また、監督と脚本を務めたのがダニエル・シャイナートダニエル・クワンのため、本作はダニエルづくしとなっている。

「スイス・アーミー・マン」感想レビュー

ノスタルジアを感じる映像

スイス・アーミー・マン

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まず本作の視聴者が一番感じたことは、現代を舞台にした作品にも関わらず、過ぎ去った時代をゆっくり懐かしむように進む感覚だ。

この秘密は監督のダニエルズが得意とする「モーション・トラッキング」という技術で、低予算ながら手作り感のある、ギミック映像を作り出すことに成功した。

また、自殺願望のある青年が謎の死体に出会うことから始まるストーリー構成で、視聴者はカタルシスも感じる。

この2つが重なったことで、視聴者は本作で不思議なタイムトラベルが体験できたのだ。

こういったオーガニックな感覚を再び体験したいなら、過去にダニエルズが製作した、「Simple Math」のミュージックビデオをおすすめする。

馬鹿げたアイデアを詰め込んだ粗い物語を、難なく見られる理由

スイス・アーミー・マン

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本作では「相棒が死体だったら?」「オナラや死体コンパスなどのR指定を含めるか?」など、監督が思いついたアイデアをひたすら詰め込んだ印象がある。

こういった物語は粗くなりやすく、視聴者にとってはかなり見にくい。

しかし、本作では社会に取り残され苦痛から解放されたい青年、ハンクを主人公にすることによって、視聴者は少しだけ親近感を覚える。

親近感を覚えると感情移入がしやすく、多少粗い物語でも難なく見れてしまう。

そのため、本作を絶賛する人は、ハンクの気持ちがわかる、もしくは同じ気持ちになったことがある人が大多数だ。

徐々に変わるサウンドトラック

スイス・アーミー・マン

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やはり「スイス・アーミー・マン」の醍醐味と言っていいのが、サウンドトラックだ。

一般的な海外映画とは違いオーケストラなどは使用せず、映画で流れる9割の音楽が、主演のポール・ダノとダニエル・ラドクリフの声によるもの。

冒頭のシーンではネガティブな悲しい曲調だったが、物語が進むごとに、だんだんとエスニックで陽気な曲調へと変わっていく。

また、本作は撮影前に作曲とレコーディングを済ませていたことから、キャストは曲を聴きながら撮影できた。

そのため、映画ではキャストの顔つきも、曲調と共に自然に変わっていく様子が見られる。

もう一度言うが、これが「スイス・アーミー・マン」の醍醐味だ。

「スイス・アーミー・マン」考察と解説

スイス・アーミー・マン

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視聴者が抱える本作の疑問点は、「メニーの正体」「ラストシーン」だ。

これは私の個人的な考えだが、メニーはハンクが作り出した魔法のような人格だろう。

彼は絶望の淵で自決を決意した瞬間に、突然メニーが現れた。

最初、メニーはただの死体にすぎなかったが、ハンクの「孤独と寂しさ」が彼に喋る能力を与えたのだろう。

そして、彼が内に秘める「生きたい」という思いがメニーの記憶を消し、ハンクが1から彼に「生きる喜び」を教えられるようにした。

最初に「ハンクが作り出した魔法」と言った理由はラストに隠されており、メニーとの会話はもともと空想だったが、ハンクが現実を受け入れたとき、彼の「魔法」は現実になった。

「スイス・アーミー・マン」の評価

スイス・アーミー・マン

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記事の冒頭でも少し紹介したが、サンダンス映画祭の観客は、本作の奇抜な設定についていけず何人かが途中退席している。

本作は「どれほどハンクに感情移入ができるか?」によって、絶賛派と否定派が別れる。

もちろん私は絶賛派だ。

本作の技術はインディペンデント・スピリット賞で高評価を得ており、編集賞に輝いた。

また、主演のダニエル・ラドクリフも最高の演技力と絶賛され、シッチェス・カタロニア国際映画祭最優秀男優賞を受賞している。

ロッテン・トマトの評価、評論家のレビューは?

スイス・アーミー・マン

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映画評論サイト「ロッテン・トマト」で本作は、評論家から71%の支持率視聴者から72%の支持率を獲得した。

スペインの評論家リカルド・ガジェゴスは、次のように語っている。

ここ数年の間で、本作は最も独創的な映画だ。面白く才能があり、そして人生について深く考えさせられる。

最後に

スイス・アーミー・マン

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私はこの映画を絶賛するが、ポジティブな人にはあまり勧めたくない。

「スイス・アーミー・マン」の魅力を最大限ひきだすには、少しでもネガティブである必要がある。

主人公のハンクは視聴者に感情移入させるための存在であり、彼は序盤でかなりネガティブだった。

逆にハンクの気持ちを少しでも理解できない、超ポジティブな人が視聴しても、残念ながら意味不明な作品と感じるだろう。

私は「今の生活から逃げ出したい」など、少しでもネガティブな思考がある人に、ぜひ本作を見てもらいたい。

ラストシーンでは、壮大なカタルシスを感じられるはずだ。

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