映画『透明人間』100年以上の歴史がある作品に、魂を宿した監督のセンス

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透明人間を題材にした作品と聞くと、2000年の「インビジブル」を思い浮かべる人が多いだろう。

実は「透明人間」は、イギリスの作家ハーバート・ジョージ・ウェルズが1897年に執筆した、優生思想を持った科学者が透明になれる薬を開発し、殺戮を繰り広げるという小説が原作である。

それから透明人間に関連する作品は、「透明女(1940年)」「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い(2003年)」など、20作品ほどが100年の内に公開されてきた。

リー・ワネル監督が制作した2020年版「透明人間」は、今まで悪役が中心に描かれた物語を、ヒロイン中心に設定を変更。

監督は他にもホラー&スリラー映画のオマージュを散りばめ、シリーズ初となるサイコロジカル・スリラー要素も取り入れ、2020年を代表する恐怖映画に仕上げた。

原作「透明人間」の概念をぶち壊したサイコロジカル・スリラー

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リー・ワネル版「透明人間」は、シリーズの概念をぶち壊した作品として知られる。

今までの作品では、マッドサイエンティストが薬で透明になり、殺戮を繰り広げるストーリーだったが、本作にはそういった要素が非常に少ない。

監督は逆に『殺戮(物理的な攻撃)』は多く描かず、『精神的な攻撃』を多く含めたサイコロジカル・スリラーとして仕上げ、『家庭内暴力(DV)』をテーマにした。

海外で『DV』は年々増加する深刻な問題であり、CNNが報告した内容によると、2020年の家庭内暴力事件による911コール(緊急通報電話)は、昨年より20%以上も増加したという。

ワネル監督はここに注目し、本作の主人公セシリアをDVの被害者とし、恋人のエイドリアンを加害者として描いた。

しかし、彼が登場するシーンは冒頭とラストの数分程度であり、劇中でセシリアは『見えない何かに支配される恐怖(透明人間)』に襲われる。

本作は今までの概念をぶち壊しているものの、サイコロジカル・ホラー作品ならではの現実味が溢れる内容(設定)にしたことで、世界的な大ヒットにつながった。

セシリアを『囚人』だと思わせるエイドリアンの家

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劇中に登場するエイドリアンの家は、ペブル・コーブ・ファームという農場で撮影された。

この家は自然や海に囲まれ、誰もが望む場所だが、ワネル監督はセシリアを囚人として扱うため、この家に狂気を感じるさまざまな仕掛けをした。

家の大きな窓から見える景色は開放的なのに対し、中はかなり暗めな雰囲気になっており、これはセシリアが過去に感じた息苦しさを表現している。

既に気づいた人も多いが、エイドリアンの家に皿などの反射物が多い理由は、「常にお前を見ている」と感じさせるために設置したという。

また、家具のほとんどが色落ちしている理由は、セシリアが感じた『刑務所のような場所』を再現するためである。

監督はこういった細かいところにも配慮し、セシリアがエイドリアンの囚人だったことを視聴者に知らしめた。

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劇中に散りばめられた、原作やホラー&スリラー映画への敬意

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「透明人間」が全世界で大ヒットした理由には、ワネル監督が劇中に散りばめた原作やホラー&スリラー映画のオマージュも関係してくる。

  • 原作のオマージュ:セシリアが睡眠から突然目覚めたとき、目の前にある帽子とトレンチコート
  • 原作のオマージュ:精神病院で現れた、顔に包帯が巻かれた人物
  • 2004年「ソウ」のオマージュ:精神病院の外壁に描かれたビリー人形
  • 2013年「死霊館」のオマージュ:セシリアとシドニーが寝ている時に、何者かが毛布を引っ張るシーン
  • 2018年「アップグレード」のオマージュ:セシリアが就職の面接で気絶するシーン

そして、本作で強調して描かれる『冷たく暗い青色』は、ワネル監督が脚本を担当した「インシディアス 最後の鍵」のオマージュである。

「インシディアス 最後の鍵」では、亡霊たちが囚われている監獄で『冷たく暗い青色』が強調して描かれ、「透明人間」では、セシリアにとって監獄のようなエイドリアンの家で強調して描かれている。

これはワネル監督の『逃げられないという不安感』を倍増させるテクニックでもあり、本作でもその手法を取り入れた。

原作はもちろん、ホラー&スリラー映画に敬意を示し、多くのオマージュを散りばめた本作は、最高の恐怖映画として仕上がった。

ホラーならではのラテン語を取り入れた「セシリア」と「エイドリアン」

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ワネル監督は原点などのオマージュを入れるだけはなく、ホラー作品ならではの『ある設定』も隠している。それがラテン語だ。

主人公セシリアは、ラテン語で「見えない人を見ることができない人(盲目)」を意味しており、あだ名のシーは英語で「見る(see)」という意味が込められている。

エイドリアンはラテン語の「Adru」から来ており、これは「海」や「水」という意味。

他にもエイドリアンはラテン語の「Atur」からも来ており、「黒い」や「暗い」という意味になる。

これらを知ったうえで本作を観ると、「セシリア」や「エイドリアン」に隠されたラテン語の意味と共通するシーンが多くあるはずだ。

1940年の『透明女』につながるラスト

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本作ではエイドリアンがソシオパスとして描かれ、主人公のセシリアが物語終盤まで、登場人物からサイコパスとして扱われる。

ただ、映画のラストでは、セシリアが本当のサイコパスのような終わり方をした。これは1940年に公開された「透明女」につながると言えるだろう。

監督は続編について何も語っていないが、主演のエリザベス・モス「ファンが望めば『透明人間2』はありえる」と語っている。

ラストのセシリアを見る限り、続編は「透明女」のように、セシリアがサイコパスになった設定で描かれる可能性が高いだろう。

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